チェック・リストの使い方
話し方の症状や吃音意識の度合は個人によってさまざまです。
話し方を完全にコントロールしている状態を「目標レベル」として、最も重度の「レベル5」までの6段階のレベルに分けてあります。
診断レベルの区分はあくまで便宜上のものであり、数値で測れる絶対的なものではありません。症状の全体を捉えるためのおよその位置づけとしてご利用下さい。
お読みになって、自分に該当する項目()の多いところが今のご自分のレベルとみることができます。当てはまる項目はひとつのレベル内に限定されず、2~3つにまたがることが多いです。
上記の例の場合は、レベル2あたりが中心といえます。
吃音はその人の置かれている環境に大きく左右されます。大勢の前で話すことが多い人と、家族など身内との会話に限られている人とでは、吃音意識の浮上する度合いが異なります。
また、話すことが多くなった、少なくなったなど、ストレスを受ける環境の変化によって診断レベルは変化するものです。
このレベル段階は改善の難易度を表したものではありませんので、レベル「2」より「3」の人の方が改善が難しいということではありません。あくまで今のご自分の吃音症状を診断する、一つの目安として受け止めていただければ幸いです。
目標レベル 安定した発語イメージが定着していて、あらゆる場で安定した話し方を維持している。
発語を完全にコントロールできているので、常習的なことばの引っかかり、発語予期不安はない。ことばを言い換えることは全くない。
自分で話していて、気持ち良く、後味が良い。長く話していても疲れない。
人々の前での司会、進行役など、言い換えのきかない決まり切ったことば、固有名詞を多く言う場面でも正確に話せる。
話し方をコントロールできるので、ピリッと緊張した場面で話すことがむしろ気持ち良く感じる。
話すスピードは早口でなく、また、遅すぎることもなく、相手に聞きやすいスピードになっている。
電話応対、その他の場面で、相手の立場に立って、聞きやすい話し方を心がける余裕がある。
安定した話し方を心がけているので、どんな場合でも自分の安定したペースで話すことができる。
雑な話し方になっていることに気がついたら、その場ですぐ安定した話し方に戻すことができる。また、そのように調節する習慣が身についている。
レベル 1 話し方は全く正常だが、本人としては吃音意識とともに発語が詰まることがある。
「ありがとうございます」「お世話になっております」など、きまりフレーズを言う時、意識が入りことばが軽く詰まることがある。
日常会話では言いにくい特定のことばはない。言い換えは殆どしないが、時折、言いづらさを感じることがある。
場面によって言いにくいことばがあったとき、その語の前に意図的にことばを添えて、流れをつけ言うことがある。(たとえば「鈴木さん」を「営業の鈴木さん」と言うことなど)※これは悪いことではありません。
スピーチなど、流れに乗ればつまらずに話せる。
人々の前で文章、資料を読み上げることはさほど苦でない。
表面的にはことばが流れても、早口や雑な言い方で自分としては後味の悪い感じがすることがある。
意識に上る言いにくい一語が言えてしまえば、後は自分のペースで余裕をもって話せる。
名刺交換のとき、名刺を渡しながら自分の名を言うのが言いにくい。
会社の朝礼での唱和などで前に立ってリードするとき、特定のことばに詰まるが、それなりにこなしている。
PTAなどの会合で、自分の名前を言うとき、詰まる感じがする。
「あ」「か」「た」など、特定の音が言いにくく感じることがある。
レベル 2 話す場面により、決められたことばを正確に言うのに苦労する。
日常会話で支障はないが、言い換えすることがよくある。話していて後味が悪い。
スピーチはできるが、名前や固有名詞など、決まったことばを言おうとすると、意識が強く入り、詰まることがある。
自己紹介、他者紹介など、言い換えのきかない場面で意識が強く入り、発語が妨げられる。
早口でことばが絡まることが多い。単語そのものの発語が早口で、人から聞き返されることがたびたびある。
名前を相手に聞きやすくゆっくり言うことができない。一瞬で言い切るような言い方をしている。
電話応対で、自分の声が周囲の人に聞かれて入るところでは、吃音意識が強く出てつまり、間が空いてしまう。反対に、周囲がある程度騒がしければ、自分の声がかき消されるので話しやすくなる。
会話で、言える言葉、言いにくい言葉をあらかじめ無意識により分けて話すことが多い。
話すことの気遣いが多く、一日が疲れる。
言いにくいことばが頭から離れず、どことなくいつも不快感がある。
苦手な話す場面を意識的に避けている。あるいは先を予測して、どうしたら避けられるかにエネルギーを費やすことがある。仕事の能率が悪くなることがある。
訪問先の静かなロビーで受付の内線をするとき、かなり緊張し、ことばが詰まることがある。自分の後に人が立っていたら、内線することを避ける。
言いにくい時は、手をぎゅっと握ったり、足で床を軽くトンと蹴ったり、テープルを軽く叩くなどの随伴行動がある。
店員にものを尋ねることは避けている。
「あ」「か」「た」など、言いにくい特定の音があり、時折つまることがある。
レジの仕事で、「○○円です」と金額を言うときつまる。
レベル 3 言い換えが多くあり、言葉を正確にタイミング良く言うことが難しい。
家族や友人などとの気心の知れた人との会話で、吃音がよく出る。相手にとって、聞きにくい話し方となっている。
言い換えが常習化している。
スピーチはなんとかできるが、司会、自己紹介など決められたことば、固有名詞を言う場面はすべて避けている。
会話での息継ぎが常に浅い胸呼吸になっている。(これはレベル「4」「5」にも顕著にみられる)
相手に質問されると、すぐに答えなければと焦り、なかなかことばが出てこない。
ファミレスでメニューを指さしながらの注文はできるが、口頭だけで注文しなければならない場では、なかなか言えないので避けている。
直接電話をして説明しなければならないと思っても、電話を避けてメールで用を足している。
通常、会話は流れるか、出だしなど、意識が入ると5秒ぐらい完全にピタッと止まってしまう。
話し出すとき、息を吸い込んだ直後、少し吐き出してから言い出すことが多い。
話しているとき、絶えず喉(のど)に力が入り、肩が凝ることが多い。
「あ」「か」「た」など、言いにくい特定の音があり、つまることが多い。
レベル 4 日常会話でかなり不自由を感じる。
相手に名前や生年月日などを尋ねられて、答えようとするが、なかなかことばが出てこない。言うのにかなり手間取る。
会話で、言える言葉、言いにくい言葉をあらかじめ無意識により分けて話すことが多いので疲れる。相手が何を話しかけてくるのかをいつも気にして、心の内で構えている。
話す時はいつも体全体がこわばる感じがする。
発語が細かく文節で区切れ気味で、浅い胸呼吸の習慣が定着している。
話し出すとき、息を吸い込み、瞬時止めてから話し出す癖がついている。
「◎◎です」の「で」の前でいったん止めて、息を吸って言っている。他にも文の末尾を区切って、吃音を出して話すことが固定している。同じ箇所で吃音を常習的に出している。
文頭、出だしの前で息を吸うことをしないで、話し出した直後に息継ぎをしている。
喉(のど)を押し殺すようにして話している。
「あ」「か」「た」など、言いにくい特定の音があると、必ずつまる。
レベル 5 日常会話でかなりの支障が出ている。重い吃音
家族、友人との会話で、常に吃音が出る。吃音を出す言い方が固定化している。
同じ音の強い繰り返しが多い。
「そ~れで」など、部分的に不自然に極端に長く音を伸ばす言い方が定着している。
自分独りだけでの音読でも吃音がでる。しばし止まってしまう。
自分ひとりだけの場でも、「た」などの特定の音の発音ができない。言えたとしても舌に力みの入った歪められた発語となる。
相手に忍耐を強いる聞きづらい話し方となっている。会話が成り立たないこともある。
文節ごとに小刻みに肩で息を吸い込むような息継ぎが固定化している。
※「さわやかカウンセリング」の電話レッスンを初めて受講する方々(成人の場合)では、レベル「1」~「2」の方々で全体の約70%程度。レベル「3」~「4」の方々が約25%程度。レベル「5」の重度の方々は2%もしくはそれ以下です。
※ 吃音の度合いは、職場などでのストレスのかかり具合、心配事、疲労などで変化するものです。診断レベルはあくまで参考程度になさってください。
※無断転載、形を変えた複製は著作権侵害となります。この診断チェックリストは、2013年から「さわやかカウンセリング」(江田)が独自で作成し掲載しているものです。